誰もが知っている北斗七星は、実は星座ではありません。88星座の一覧を最後まで探しても出てきません。北斗七星の正体である「アステリズム(星群)」とは何か、星座と何が違うのかを、実際の星表の数値とあわせて解説します。
国際天文学連合(IAU)が1928年に定めた星座は88個で、その一覧に「北斗七星」はありません。北斗七星はおおぐま座という星座の、腰から尻尾にあたる一部分です。おおぐま座はもっと大きく、北斗七星はその中の目立つ7つの星だけを取り出した形にすぎません。
このように、星座の公式な区分とは無関係に、人が「そう見える」と決めた星の並びのことをアステリズム(asterism、日本語では星群)と呼びます。
| 星座(constellation) | IAUが定めた88個。天球を隙間なく分割する領域であり、境界線が決まっている。すべての天体はどれか1つの星座に属する。 |
|---|---|
| アステリズム(星群) | 個数は決まっていない。星をつないだ形であって領域ではない。公式の登録も境界線も無く、複数の星座にまたがってよい。 |
重要なのは、星座が「領域」でアステリズムが「形」だという点です。星座は地図でいう都道府県、アステリズムは地図に自分で引いた線に近いものです。
よくある誤解として、すばる(プレアデス星団)はアステリズムではありません。あちらは見かけ上そう見えるだけの形ではなく、実際に重力で結びついて一緒に生まれた星団です。形の話ではなく天体そのものの話になります。
以下は、当サイトが実際に星空の描画に使っている星表(Gaia DR3 と Yale Bright Star Catalogue)から、北斗七星の7星を引いた値です。V等級は星表の精度に合わせて0.1等単位、色は星の表面温度から決まる描画色をそのまま載せています。
| 星 | バイエル符号 | V等級 | 色 |
|---|---|---|---|
| ドゥーベ | α UMa | 1.8 | 橙寄りの白 |
| メラク | β UMa | 2.4 | 青白 |
| フェクダ | γ UMa | 2.4 | 青白 |
| メグレズ | δ UMa | 3.3 | 青白 |
| アリオト | ε UMa | 1.8 | 青白 |
| ミザール | ζ UMa | 2.3 | 青白 |
| アルカイド | η UMa | 1.9 | 青白 |
この表から、写真や図では気づきにくい3つのことが読み取れます。
88星座は1928年に確定していて、もう増えません。しかしアステリズムには公式の一覧が無く、登録も許可も要りません。夏の大三角も、誰かが「この3つは三角に見える」と言い出したものが広まっただけです。つまり、星の並びに名前をつける行為そのものは、いまも開かれています。